脱出

もう本当にブログという存在を忘れていた。

このブログ忘れていたくだりを、過去何回も使ってきたのでもういよいよやめようと思う。

とは言え、本来ブログというものはその日に起こった出来事とかを書いたりするいわゆる日記だ。

これが素敵なミュージシャンでもあれば、ライブのことを振り返ったり、次回のライブに向けて取り組んでることをちょっと覗かせたり、なんなら動画を貼り付けて素敵な音を届けたり、、。

さらにオシャレなかたなら、小型犬を連れてスタバのテラスで、mac bookを使ってそんなブログを書くのだろう。

つまり俺には皆無だ。

そんなに書いていないが、過去のブログを読み返してみた。

音楽とは無縁だ。

no music yes lifeだ。

このままだとゆかいなおっさんと思われるだけだ。

ゆかいなミュージシャンでありたい。

なのでおもむろにスマホを取り出し、ブログを打っている。

ちょっと理想と違うのが、小型犬も連れていないし、スタバでもない。

トイレだ。

正確にはマルイのトイレだ。

僕は今めっちゃ戦っている。

こんなことを言うと、どうせ便意と戦っているのだろうと思うかもしれないが、そっちの戦いにはもう勝利を収めている。

圧勝だった。

この戦いについて深く書くと、不愉快なおっさんにまで成り下がりそうなのでやめておこう。

僕が今戦っている相手は、手をかざすセンサーだ。

「手をかざすと流れます」のセンサーに手をどれだけかざしても反応しないのだ。

分かりやすく言うと、流れないのだ。

僕の冷や汗は随分流れているが、、。

できる限りのことはやった。

左手でもかざした。

両手でもかざした。

目を閉じて祈るようにかざした。

かざすどころではなくめっちゃ触れた。

つまり、手は尽くしたのだ。

僕にできることはただ一つ、この場から去ることだ。

何食わぬ顔で出て行った場合、もし扉の外に人が待っていたら、、

それは気まずい。

ここは一つ、「好きだけどさよなら作戦」に出るしかない。

「好きだけどさよなら作戦」とは、好きなんだけど色々な理由でさよならしなくちゃいけない場面で、最後にさよならと言って涙を見せないように振り返らずに走り去る、ドラマとかでヒロインにはなれなかった人がやるあのパターン作戦である。

つまり扉を開けて振り返ることなくこのトイレから、いやマルイから走りさるのである。

こんなつもりじゃなかったんだごめんね。

そして次に使う方、本当に申し訳ありません。

すぅーっと息を吸い、僕は意を決して扉を開けた。

するとその瞬間、『ジャーーー』っと勝手に流れたのだ。

僕は思わず振り返った。

トイレが僕に向かって「ありがとう」と言ってるようで、なんか少しムカついた。