名探偵

地元に帰ったときの話。

僕がスーパーかわいい幼稚園児の頃から好きだったパン屋がある。

今でもその近くを通ると必ず立ち寄るのだ。

先日もたまたま近くまで来たので立ち寄ろうと思った。

がそこでふと気づく。

今日は日曜日だ。

そう、そのパン屋は日曜は店休日なのである。

僕はショックで、高校生の頃に大好きだった女の子から「ほかに好きな人がいるの。」と言われた時と同じように膝から崩れ落ちそうになった。

でも諦めきれない僕はその女の子を、、あっ、いや、そのパン屋が奇跡的に開いてないかのぞいてみた。

すると灯りがついてる。

お店の外には小さな看板が出ていて、こう書かれていた。

「本日全品100円」

こんな奇跡はあるだろうか。

例えるなら、その女の子が急に「やっぱり私水口君が好き。しかも今ならハワイ旅行プレゼント」そんな感覚だ。

僕は勝手な妄想を膨らませ、ウキウキルンルンでお店に入った。

ちなみに全品100円と言っても元々100〜150円ぐらいのパンばかりで消費者にとってはありがたいお店なのだ。

お店に入って気づいたことがいくつかある。

まず、パンが少ない。

いつもだったら店の奥でパンを作ってる人がたくさん見えるのだが、今日は誰もいない。

そしてレジに立ってるのは明らかに小学生の女の子。

僕は頭をふるに回転させた。

じっちゃんの名にかけて。

まずパンを作ってる人が見当たらないことと、並んでるパンの少なさから見て、これはおそらく昨日のパンのあまりだ。

そしてレジに立つ小学生の女の子。

全品100円、、。

謎は全て解けた。

これはつまりこの女の子の親がパン屋を営んでいて、自分の娘に社会勉強をさせつつパンを無駄にしない作戦なのだ。

しかも女の子からしたらお小遣いをもらえるという、これは両者にとってwinwinなのだ。

さらには僕ら消費者にとっても値段は安くなってるのでありがたいことである。

みーんな得。

謎解きを済ませた僕はいつも通り、クリームパンと練乳パンをトレイに載せてレジに向かった。

乳製品多めだと思われてもしょうがないが、そこのパン屋のクリームパンと練乳パンはどちらもハンパないのだ。

慣れない手つきでレジを扱う女の子。

僕はご存知の通り犯罪とは無縁の優しい人間なので、「ゆっくりで大丈夫だよ〜」って言ってあげた。なんだったら会計間違って一個100円になってなくてもそのまま払ってあげるつもりでいた。

それぐらい優しい人間でありたいのだ。

返ってあせらせてしまったかもしれないが、なんとかレジに会計の表示が出てその子は言った。

「760円です。」
「絶対違うやろ」

思わず素の自分が出た。